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建物賃貸借契約公正証書

建物賃貸借契約公正証書とは

建物賃貸借契約公正証書は、一戸建て、アパートやマンションの部屋、事務所などの建物を貸し借り(借家)する際に作成する契約書です。

「住まいとは生活の器である」との言葉通り、住居は暮らしを立てていくための基本となります。
そのため、賃貸人(大家さん)に比べて、立場的にも経済的にも不利な賃借人(入居者や店子)を守るため、建物の賃貸借には、民法ではなく借地借家法が適用されます。

また、借地借家法は、借主だけでなく、貸主である大家さんを保護する規定も盛り込まれています。

  • ・家賃はきっちりと払ってほしい
  • ・退去時には敷金をちゃんと返してほしい
  • ・不払いの時は、差押えをして回収したい

このような心配事やトラブルが将来おこらないように、あらかじめ契約内容を公正証書にしておくと安心です。

建物賃貸借契約公正証書の記載事項

建物賃貸借契約公正証書には、次のような内容を記載します。

  • どの建物・部屋を賃貸借するのか

    具体的な建物の所在や名称などを記載します。
    (例:甲(賃貸人)は、下記物件を乙(賃借人)に賃貸し、乙はこれを借り受けた。
       名称:○○アパート
       所在地:○市○町○丁目○番○号
       構造:鉄筋コンクリート造○階建
       住戸番号:○号室
       床面積:○○.○○㎡)

  • 賃貸借期間について

    いつからいつまでその建物・部屋を貸し借りするのかを記載します。
    (例:賃貸借の期間は、平成○年○月○日から○年間とする。)

  • 家賃と支払方法について

    家賃はいくらで、どうやって支払うかを記載します。
    (例:賃料は1ヶ月○万円とし、乙は毎月末日までに、翌月分を甲指定の口座に送金して支払う。)

  • 契約の解除について

    契約期間内でも、その契約を解除できるケースについて記載します。
    (例:乙が以下のいずれかに該当した時は、甲は催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
      (1)賃料の支払を○ヶ月以上怠ったとき。
      (2)本契約の他の条項に違反したとき。))

  • 敷金や保証金について

    敷金や保証金を支払う際には、その金額などを記載します。
    (例:乙は甲に、敷金○万円(賃料○ヶ月分)を預け入れ、甲はこれを受領した。
       甲は、明け渡し日から○日以内に、敷金の全額を無利息で返還しなければならない。
       ただし、乙に賃料の滞納など債務の不履行がある場合は、敷金から差し引くことができる。)

  • 担保・連帯保証人について

    担保や保証人、連帯保証人をつけた場合には、その内容を記載します。
    (例:連帯保証人○○は、乙が甲に対し負担する一切の債務につき連帯して保証する。)

  • 強制執行について

    「もし支払えなかった場合には、強制執行(差押え)を受けます」という、賃貸人と賃借人の承諾を記載します。
    (例:本契約による金銭債務を履行しない場合、直ちに強制執行に服する旨を陳述した。)

建物賃貸借契約公正証書作成の注意点

建物賃貸借契約公正証書を作成する際には、次のような点に注意が必要です。

  • 賃貸借の期間をはっきりさせること

    借家契約には、「いつからいつまで貸し借りするか」という賃貸借の期間に応じて、次のような種類があります。
    ・通常の建物賃貸借契約
    ・取り壊し予定のある建物賃貸借契約
    ・定期建物賃貸借契約
    ・期間の定めのない建物賃貸借契約
    これらの契約の種類によって、更新や解約申し入れなどに、下記のような違いがでてきます。

    取り壊し予定のある

    契約の種類 賃貸借の期間 契約の更新
    通常の建物賃貸借契約 1年以上~契約した期間
    (1年未満の契約は期間の定めのないものとみなされる)
    期間満了の1年前~6ヶ月前までに更新しない旨を通知しない限り従前の条件で更新する
    (期間の定めのない契約となる)
    建物賃貸借契約 建物を取り壊すまで
    (取り壊し予定の前日など)
    なし
    定期建物賃貸借契約 契約した期間(1年未満も可能) なし
    期間の定めのない
    建物賃貸借契約
    解約するまで
  • 契約の解約について

    通常の建物賃貸借契約や、期間の定めのない建物賃貸借契約では、借主が「まだここに住み続けたい」と思っている場合には、貸主に「親族がすぐその建物を使う」や「転居費用や他の家を貸す」などの「正当な事由」がなければ、「解約したい」「更新したくない」と言えません。
    貸主にとって厳しい条件となるため、期間がくれば契約が終了する定期建物賃貸借契約を選ぶ貸主さんもいます。
    定期建物賃貸借契約を結ぶには、公正証書などの書面を作成しなければいけません。

  • 敷金について明記しておくこと

    敷金は、家賃の滞納があったり、部屋を壊してしまった場合に備えて、大家さんに預けておくお金です。
    退去する時に滞納や破損があれば、敷金から損害額が差し引かれますが、なければ全額借主に返還されます。
    こういった金銭については、民法や借地借家法には特に規定がないので、敷金を預ける場合には必ず契約書に明記します。

  • 管理規約を守る旨を入れておくこと

    マンションやアパートの賃貸借契約の場合では、他の居住者とトラブルにならないよう、それぞれの部屋の使い方(ペットの飼育など)や、エレベーターなど共用部分の使い方といったルールが必要になります。
    賃貸借契約書に全て書くと、ルール改正の際に手間がかかるので、別に「管理規約」を作った上で、契約書には「管理規約を遵守する」旨を記載します。

    なお、マンションの管理規約は、管理組合の集会で決めますが、 新築の分譲マンションなどの場合に、購入者が全員集まって話し合うのは大変です。
    (そもそも、何の規約もないマンションへの入居はためらってしまいます。)
    そのため、「どこまでが敷地か」「どの部屋が集会室か」といったことなどに関しては、 分譲業者があらかじめ、公正証書によって規約を設定しておくことができます。

  • 強制執行受諾文言を入れておくこと

    「約束通りに支払わなかった時には、強制執行を受けても異存ありません」という文言を入れておくことで、裁判をしなくてもすぐに差押えることができます。
    この文言がないと、公正証書を作っても強制執行できなくなってしまいます。
    約束通りに支払うべきお金には、借主が支払う家賃だけでなく、貸主が借主に返還する敷金も含まれます。

建物賃貸借契約公正証書作成の必要書類等

建物賃貸借契約公正証書を作成する際には、次のようなものが必要となります。

  • 貸主と借主に必要なもの

    ・『運転免許証等(パスポートや写真入りの住基カード)+認印』
    ・『印鑑証明書+実印』
    上記のうちいずれかが必要となります。

  • 貸主や借主が代理人を依頼した場合

    ・『委任状(代理人との契約内容を記し、委任者の実印を押したもの)+印鑑証明書』
    ・代理人自身の『運転免許証等+認印』、もしくは『印鑑証明書+実印』
    上記すべてが必要となります。

  • 当事者が法人(会社など)の場合

    ・『代表者の資格証明書と代表者印+印鑑証明書』
    ・『法人の登記簿謄本と代表者印+印鑑証明書』
    上記のうちいずれかが必要となります。

  • 賃貸借契約書など

    当事者間で交わした契約書や、契約内容を記した書面を、公正証書作成の際の資料とします。

  • 公証人手数料

    公正証書の作成の際には、その目的価額に応じて、公証人に手数料を支払わなければなりません。
    建物賃貸借契約公正証書の場合の目的価額は、『期間中の賃料総額の2倍』です。
    10年超の契約の場合などは、『10年分の賃料総額の2倍』です。
    賃貸借契約は、双方が義務を負うので(借主に使用させる義務+貸主に家賃を支払う義務)、それぞれが負担する価格の合計額(建物の使用料+家賃)が目的価額となります。
    公証人手数料については、こちらをご覧下さい。

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