遺産分割協議公正証書
遺産分割協議公正証書とは
遺産分割協議公正証書は、「だれが、どの財産を、どれだけもらうか」を、相続人全員で話し合い、決めた内容を記した文書です。
亡くなった人の遺言がないときや、遺言があっても遺産分割の割合が書いてなかったとき、遺言が法律の要件を満たさず無効だったとき、または、遺言とは違う内容で遺産を分割するときなどに、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をします。
この話し合いがつくまでは、遺産は相続人全員の「共有」になります。
話し合いの内容を「遺産分割協議書」にする義務はありませんが、相続税の申告が必要な場合や、不動産の所有権移転登記をする場合、預金を下ろす場合などには、遺産分割協議書の提出が必要になります。
- ・「相続人で頭割り」できない財産(不動産や美術品など)がある
- ・残された借金を、誰が払うのかきちんと決めたい
- ・同居していた家を相続したが、相続税減額の特例を受けたい
「ウチは兄弟仲がいいから大丈夫」と、共有のまま放置しておいても、子や孫の代でいざ名義変更をしようとすると、それまでの全相続人の同意と実印を集めなくてはならず、時間が経てば経つほど、大変な手間と労力がかかってしまいます。
また、平成25年度の税制改正 (平成27年1月1日以降適用)によって、相続税の基礎控除額が今までの6割に減額され、より多くの人が「相続税の申告」をしなければならなくなりました 。
相続人の間で深刻なトラブルが将来おこらないように、早めに遺産分割協議をして、その内容を公正証書にしておくと安心です。
遺産分割協議公正証書の記載事項
遺産分割協議公正証書には、次のような内容を記載します。
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遺産分割協議をしたことについて
だれが、いつ死亡して、相続人のだれが話し合ったのかを記載します。
(例:平成○年○月○日死亡した、被相続人○○の遺産について、共同相続人全員で協議した結果、
下記の通り遺産を分割することを、全員異議なく承諾した。) -
遺産の分割について
だれが、どの財産をもらうのかを記載します。
(例:下記相続財産は、相続人△△が取得する。
所在 ○県○市○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○.○○㎡) -
分割の方法について
頭割りできないような財産(不動産など)がある場合、どうするのかを記載します。
(例:相続人△△が取得する遺産は同人の相続分を超えるため、同人は、相続人◇◇に対し、
平成○年○月○日までに、金○万円を代償して支払う。) -
負債について
借金などが残っている場合、だれがその負債を負うのかを記載します。
(例:相続人△△は、被相続人の債務すべてを承継する。) -
別の財産が見つかった場合について
話し合いの後に、新たに別の財産が見つかった時どうするのかを記載します。
(例:本協議書に記載のない資産及び、後日判明した遺産については、相続人△△が取得する。) -
全相続人の署名押印
「話し合いの内容に合意した」と、相続人全員が自筆で署名し、実印を押印します。
(例:以上の通り遺産分割協議が成立したことを証するため、相続人全員が署名押印した本協議書を、
○通作成し、各自1通ずつ所持するものとする。
△市△町△丁目△番△号 相続人 △△ 印
◇市◇町◇丁目◇番◇号 相続人 ◇◇ 印)
遺産分割協議公正証書作成の注意点
遺産分割協議公正証書を作成する際には、次のような点に注意が必要です。
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遺産分割協議の参加者について
遺産分割協議には、相続人全員が参加しなければいけません。
ただし、相続人の中に認知症の人や、未成年者(胎児含む)がいる場合、または行方不明者がいる場合には、代理人に参加してもらいます。
(家庭裁判所に申立てて、「特別代理人」などを選任してもらいます。)
また、遺言によって財産をもらった人や、遺言執行者も参加します。
この協議は、「一堂に会して」話し合うという方法だけでなく、代表者が原案を作って、各相続人をまわって同意をもらったり、遠くに住んでいる人には、書面で同意をもらう方法もあります。 -
分割の方法について
全員が同意すれば、遺産はどう分割してもかまいません。
法定相続分と違っていたり、遺言と違ってもかまいません。
遺産分割協議の後で遺言が見つかったりしても、全員(遺言執行者も含む)が合意すれば、遺言の内容を無視して分割できます。
分割の方法には、遺産をそのまま各相続人にわけたり(現物分割)、不動産などは売却してそのお金を分割したり(換価分割)、遺産をもらった人が他の相続人にお金を払ったり(代償分割)、または、分割せずに持分を決めて共有する方法があります。 -
新たに別の財産が見つかった場合について
遺産分割協議をはじめるにあたっては、あらかじめ、「どんな財産が残されているのか」を調べておきます。
しかし、把握しきれなかった財産が、協議の後に出てくることもあるので、その場合にはどうするのかを記載しておきます。
ただし、もしその財産が、相続人の誰かが隠していたものだったり、遺産の大部分を占めるような大きなものだった場合には、遺産分割協議をやり直すことができます。 -
遺産分割の時期について
「いつまでに遺産分割しなければならない」という法律上の期限はありません。
しかし、相続税の申告期限内(亡くなった日の翌日から10か月以内)に遺産分割協議が終わっていなかったら、「未分割」の申告とされます。
この場合、配偶者控除 や小規模宅地等の特例 も受けられなくなります。
(3年以内に協議が成立すれば、訂正申告や還付を受けられます。)
遺産分割協議公正証書作成の必要書類等
遺産分割協議公正証書を作成する際には、次のようなものが必要となります。
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亡くなった人(被相続人)に必要なもの
・生まれてから死ぬまでの『戸籍謄本』『除籍謄本』『改製原戸籍謄本』
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相続人に必要なもの
・『印鑑証明書+実印』
・『戸籍謄本』
上記すべてが必要となります。 -
代理人を依頼した場合
・『委任状(代理人との契約内容を記し、委任者の実印を押したもの)+印鑑証明書』
・代理人自身の『運転免許証等+認印』、もしくは『印鑑証明書+実印』
上記すべてが必要となります。 -
不動産を分割する場合
・その不動産の『登記事項証明書』または『固定資産評価証明書(納税通知書)』 -
不動産以外の場合
・『預金通帳』『有価証券の残高証明書』『車検証』『借入先の残高証明書』など
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遺産分割協議書やメモなど
当事者間で交わした『遺産分割協議書』やメモなどを、公正証書作成の際の資料とします。
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公証人手数料
公正証書の作成の際には、その目的価額に応じて、公証人に手数料を支払わなければなりません。
遺産分割協議公正証書の場合、『預貯金などの金額』『不動産の時価』が、目的価額になります。
相続人ごとに、『相続する財産の価額』に応じた手数料を算定し、その合計額が公正証書全体の手数料になります。
公証人手数料については、こちらをご覧下さい。