扶養契約公正証書
扶養契約公正証書とは
扶養契約公正証書は、親や兄弟などの親族を扶養する際に作成する契約書です。
扶養とは、年齢や身体的状況など様々な事情によって、自分一人では生活していけない人の面倒を見ることです。
夫婦や親子、祖父母と孫、兄弟姉妹の間には、お互いに扶養する義務があります。
「年老いた親の面倒は子どもが見るべき」という、世間の認識もあります。
しかし、家族それぞれの事情もあるため、それほど簡単に片づく問題ではありません。
- ・誰が同居するのか、はっきりさせておきたい
- ・親を引き取らない兄弟達には、費用を分担してほしい
- ・払ってもらえなかった時は、差押えをして回収したい
親族の間で、扶養についてわざわざ「契約」するのか?とも感じますが、親族だからこそ、十分に話し合い、お互いが納得する必要があります。
親族間で心配事やトラブルが将来おこらないように、あらかじめ取り決めた内容を公正証書にしておくと安心です。
扶養契約公正証書の記載事項
扶養契約公正証書には、次のような内容を記載します。
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同居者・扶養者について
だれが、だれの面倒を、いつまで見るのかを記載します。
(例:長男(乙)は、母(甲)を引き取り、生きている限り扶養する。) -
生活費の負担について
扶養しない親族が分担する費用の金額、期間、支払方法を記載します。
(例:甲の生活費の一部として、長女丙は毎月○万円、二男丁は毎月○万円を負担する。
丙及び丁は、平成○年○月から甲の死亡まで、毎月○日までに、乙指定の銀行口座に送金して支払うこととする。) -
負担金額の増減について
費用の分担額などを変更できる場合について記載します。
(例:甲の健康状態の変化、物価の変動、その他の事情に変更があった時は、
乙丙丁協議の上、それぞれの負担額を定めることとする。) -
強制執行について
「もし支払わなかった場合には、強制執行(差押え)を受けます」という、費用負担者の承諾を記載します。
(例:丙及び丁は、本契約による金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。)
扶養契約公正証書作成の注意点
扶養契約公正証書を作成する際には、次のような点に注意が必要です。
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内容を変更できるようにしておくこと
扶養する側も、される側も、将来にわたってずっと「現状が続く」とは限りません。
それぞれの収入や財産、健康状態や家庭環境が変わった場合には、費用の負担割合などを変更できるようにしておきます。 -
強制執行受諾文言を入れておくこと
「約束通りに支払わなかった時には、強制執行を受けても異存ありません」という文言を入れておくことで、裁判をしなくてもすぐに差押えることができます。
この文言がないと、公正証書を作っても強制執行できなくなってしまいます。
扶養契約公正証書作成の必要書類等
扶養契約公正証書を作成する際には、次のようなものが必要となります。
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当事者(扶養者・被扶養者)に必要なもの
・『運転免許証等(パスポートや写真入りの住基カード)+認印』
・『印鑑証明書+実印』
上記のうちいずれかが必要となります。 -
代理人を依頼した場合
・『委任状(代理人との契約内容を記し、委任者の実印を押したもの)+印鑑証明書』
・代理人自身の『運転免許証等+認印』、もしくは『印鑑証明書+実印』
上記すべてが必要となります。 -
合意書やメモなど
親族間で話し合った内容を記した『合意書』やメモなどを、公正証書作成の際の資料とします。
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公証人手数料
公正証書の作成の際には、その目的価額に応じて、公証人に手数料を支払わなければなりません。
扶養契約公正証書の場合の目的価額は、『最大10年分の負担費用の合計額』です。
公証人手数料については、こちらをご覧下さい。